学校改革推進部長(ソーシャルデザインラボ所長)講話2019

ヴィパッサナーシリーズを小休止して、いつもの講話を1回はさみます。


あけましておめでとうございます。
今年はすぐにもう一回「あけましておめでとうございます。」と言わなければなりません。
何のことかわかりますか?
去年から耳にタコができるほど聞かされている「平成最後の・・・」が思い浮かんだ人は勘が良い。
君たちが生まれて初めて経験するビッグイベント”改元”が行われます。
元号が変わるということは、平成という時代が終わるということです。
それに呼応するかのように、社会は変わりはじめています。
働き方改革
これはまだ君たちにはあまりピンとこないかもしれません。
これならどうでしょう?
大学入試改革。
高校1年生にとっては他人事じゃないですよね。
学校改革。
○○高校でまさに現在進行中です。
このように、世の中のいたるところで改革がすすめられていて、○○高校も無関係じゃありません。
このように社会が変わりはじめた背景には、またしても耳タコの”少子高齢化”という問題があります。

少子高齢化はその名の通り、2つの大きな変化をもたらします。
1つめは、少子化によって生産人口が減少し、国力が低下するということです。
国力を表す指標の1つであるGDPですが、2018年現在日本はアメリカ・中国に次いで世界3位です。
しかし、約30年後の2050年にはどうなっていると思いますか?
ある機関の予測によると、2050年のGDPランキングは1位中国・2位インド・3位アメリカ・4位インドネシア・5位ナイジェリア、日本は8位にまで後退しているそうです。
M−1のジャルジャルネタで笑っている場合ではありません。
日本がインドネシアの後塵を拝する時代がすぐそこまで迫っているのです。
日本はもはや豊かな国ではなく、貧乏な国へとゆるやかに衰退しています。
すでに身近な変化として、巷にあふれかえる観光客が挙げられます。
中国が豊かになったから観光客が増えた。
たしかにそうですが、それだけではありません。
日本は世界から見たら、お得な国なのです。
東京の物価は高いというのは過去の話で、外国人は誰もそんな風に思っちゃいません。
日本は安くてよいサービスを提供するお得な国だから、外国人が殺到しているのです。
2つめは、高齢化です。
2018年現在、100歳以上の方は何人いると思いますか?
答えは、69,785人です。
これは○○市2つ分の人口に匹敵します。
1963年にはわずか153人、1980年でさえ968人しか存在しなかったのだから、恐ろしいほどの勢いで高齢化が進行していることが分かります。
しかし、高齢化はとどまるところを知りません。
西暦2000年以降生まれ、つまり君たちの世代です、の2人に1人は100歳以上生きると予測されています。
これが”人生100年時代”といわれる所以です。
18歳の君たちの人生はあと80年も続くのです。
80年後の未来が想像できますか?
私には全く想像できません。
しかし、歴史に携わる者の端くれとして、未来は予測できなくとも過去ならば想像できます。
今から80年前とは、1939年です。
第二次世界大戦が勃発した年です。
1939年の日本人の誰が、紅白歌合戦で「 USA! USA! カーモンベイビーアメリカー!」(手の動きはいいねダンスで)なんて歌う時代がくると想像したでしょうか。
当時の日本なら非国民と誹られ、下手すれば治安維持法で逮捕されてしまうかもしれません。
そんな日本(大日本帝国)は滅び、新しい日本が誕生しました。
つまり、80年後は国家があるかどうかすらわかりません。
ましてや現在の基幹産業である車やテレビやスマホだって存在するかどうかわかりません。
現在の常識や技術だけでは太刀打ちできない世の中になっていることだけは間違いありません。

では、この予測不可能な時代をどう生きたらいいのでしょうか?
答えはすでに君たちは知っています。
新しい時代を主体的に生きるコンパスこそ”○○高校CAN-DOリスト”です。
「人を思いやる力」「人とつながる力」「協働する力」「挑戦する力」「未来とつながる力」「知識を活用する力」。
この6つの力こそ時代を超える普遍的な力です。
2学期にCAN-DOリストの振り返りを実施しましたが、全学年共通して低い力が1つありました。
何だかわかりますか?
それは「未来とつながる力」です。
5級「自分の学力について、得意・不得意を理解している」「経験のないことに対しても、興味をもって取り組むことができる」
4級「自分の職業・学問適性を理解している」「現代社会の課題について、日常的に情報を収集している」
3級「自分や他者の経験を元に、進路について考えることができる」「現代社会の課題について、自分と関連させて考えることができる」
このように「未来とつながる力」とは、基礎的な部分は自己理解と社会理解といった要素から構成される力です。
この力が低いということは、○○高校生はヤムチャ化しているということです。
ヤムチャというのは『ドラゴンボール』のキャラで、とにかくよく負けます。
なぜそんなに負けるかというと、相手の戦闘力を見誤り、自分の能力を過信するからです。



自分と向き合おうとしない、社会のことを知ろうとしない、未来とつながらない○○高校生は、まさにヤムチャに他なりません。
ここで提案があります。
3学期はヤムチャ撲滅キャンペーンをやってみませんか?

「ゴーンが逮捕されたらしいな」→「は?除夜の鐘がどうしたん?」→「はい、ヤムチャ
「昨日新聞見た」→「見てへん」→「はい、ヤムチャ
「もう、受かりそうな大学でええわ」→「はい、ヤムチャ

このように、日常生活のなかで時事問題にボケをかますシーンや自分と向き合わないシーンに遭遇したら、もぐらたたきのように「ヤムチャ」と指摘しあうのです。
半分冗談ですが、半分本気です。
揺らぎ続ける自己を理解するには、その足場となる社会を理解する必要があります。
変化し続ける社会を理解するには、新聞などを通じて日常的に情報をアップデートし続けなければなりません。
つまり、みんなの心に巣くうヤムチャを退治するには、日々学び続けるしかないのです。
繰り返しになりますが、これからの”人生100年時代”を生き抜くためには学び続ける姿勢が最も重要となります。
このことを私は、スイミングスクールから学びました。※1
しかし、話始めると長くなるのでまたいつかの機会に話すことができればと考えています。

というわけで突然ですが最後に、コンピューターの父と呼ばれているアラン・ケイの名言で締めくくりたいと思います。
「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」
偶然にも未来とつながる力1級も同じような内容でした。
現代社会の課題について、周囲と協働して解決を目指すことができる。」
未来がどうなるかではなく、未来をどうするかと考えることで、未来は変わります。
未来に目を閉ざすのではなく、未来を自分で切り開くという強い気持ちとたゆまぬ努力ができる〇〇高校生が、一人でも増えることを期待して学校改革推進部長の講話とさせていただきます。



※1「LIFE SHIFT(2018-12-15)」参照