進路部長講話〜其之参〜

この壇上でみなさんに話をするのは三回目です。
そのとき、みなさんに質問をしましたが、覚えていますか?

では、みなさんの成長を確認するためにも、もう一度同じ質問をここで聞いてみたいと思います。
何度も言いますが、こういう場面で自分の意思をあらわすことができる人はすごい人です。


勉強することはかっこいいと思っている人は手を挙げてください。(3年生多数挙手。2年生は少数。1年生前回より減少。)

それでは、もう1つ。
勉強することが当たり前、歯を磨くように勉強できている人は手を挙げてください。(3年生多数挙手。2・1年生は少数。)


この2つの質問は、前回もしました。
「勉強することがかっこいい」とは、○○高校に勉強する雰囲気があるのかを問う質問であり、「勉強することが当たり前」とは、進路実現するための学習習慣や忍耐力を問う質問です。
この2つが進路実現するための土台となります。
そういう意味で、3年生はさすがですね。
「勉強することがかっこいい」「勉強することが当たり前」という2つの問いに手を挙げられなかった人、矛盾するようですが、次の質問に答えることができれば心配いりません。
次の質問にも答えることができないようであれば、これから言う話をよく聞いておいてください。

「あなたはなぜ勉強するのですか?」


いきなり答えを言ってしまってはおもしろくありませんので、皆さんには次のような話からその答えについて考えてみましょう。
状景を想像しながら、聞いてください。


あるところに3人の石切工が働いていました。

そこに、旅人が現れ、3人の石切工に「あなたは、何のために石を切っているのですか?」と尋ねました。
一人目の石切工は「お金をもらうためだよ」と答えました。
二人目の石切工は「将来、腕の立つ職人になるために仕事しているんだよ」と答えました。
三人目の石切工は「これから何百年も町のみんなが訪れることができる立派な教会の土台を作っているんだよ」と答えました。

さて問題です。
「この3人の石切工のうち、誰が一番いい仕事をするでしょうか?」
(挙手をさせる。一人目は数名挙手。二人目は2/5程度の生徒が挙手。三人目が若干二人目より多めの挙手)

この質問に答えはありません。
ただし、一人目の石切工はお金のために働いています。
二人目の石切工は自分のために働いています。
三人目の石切工は社会のため、社会に役立つために働いています。
もしかしたら、お金のために働く人が一番いい仕事をするかもしれません。
ですが、1つだけ確実に言えることがあります。
自分の能力は、自分のためではなく、他人のために使ってこそ真価を発揮するということです。
才能なんてものは、自分のために使っているとすぐに枯渇してしまうものなのです。
例えば、有名な音楽家ヴェートーベンには、「エリーゼのために」という名曲があります。
クラシックに興味がなくても、誰もが一度は聞いたことのある美しい曲で、私の好きな曲の1つでもあります。
この曲は、言わずもがなタイトルを聞いただけでわかりましたね?
ヴェートーベンが大好きなエリーゼさんのために作った曲です。
他人のためだからこそ、あのような美しい旋律を刻むことができたのです。
ヴェートーベンの後に例を出すのは気が引けますが、私自身の話もしてみたいと思います。
私は、今日も朝五時に起きて、10kmほど走ってきたのですが、もうかれこれ7年近く続けています。
これが、ダイエットのためだとか、ポケモンGOのためだったりしたら、続かなかったと思います。
私がこんな酔狂な生活を継続できたのは、いい授業がしたいからです。いい仕事がしたいからです。
朝走ってシャワーを浴びると、驚くほどパフォーマンスが上がります。
もう5年ほど風邪を引いていませんし、朝八時からバリバリ、フルスロットルで仕事をしています。
つまり、自分のためではなく、生徒のため、学校のためだから、頑張れるのです。


翻って、みなさんはなぜ勉強するのでしょうか?

受験のためですか?
では何のために受験するのですか?
就職するためですか?
では何のために就職するのですか?
生きていくため?
では何のために生きるのですか?

つまり、なぜ勉強するのかという問いは深掘りすると、”何のために生きるのか”という人生について考え、志をたてることなのです。

私はプロレスが好きですが、いい試合としょぼい試合の違いが分かりますか?
プロレスは他のスポーツと違って、目の前の試合だけを見ていてもそれほどおもしろくありません。
プロレスの醍醐味はアングルにあるのです。
アングルとは筋書きであり、ストーリーです。
つまり、”何のために戦うのか”が明確であればあるほど、おもしろくなるのです。
オカダカズチカが台頭してきた頃は、新日本プロレスの真のエースは誰なのかをめぐる戦いであったし、最近のロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン内藤哲也は、制御不能というキャラに象徴されるように体制(ビッグブラザー)に対する戦いで人気を博しています。
このように、いいプロレスには理由があるのです。


勉強でも同じです。
「なぜ勉強するのか」の理由を見つけた人は、強い。
本年度、○○高校から多数の国公立推薦合格者が生まれました。
昨年度の2.5倍で、府立高校の中でもトップクラスです。
なぜそれが実現できたかはもうおわかりですね。
3年生と面接練習をしていると、「発展途上国の貧困問題を解決したい」「地元を守りたい」「病気で困っている人を助けたい」といったように理由は十人十色だけれども、皆、社会のために生きる使命感をもち、だから大学で勉強すると熱く語ってくれました。
3年生は、身だしなみや挨拶や学校行事といった新しい学校文化を創造してくれました。
そこに、また新しい歴史を刻んでくれました。
1・2年生は、この先輩の姿を目に焼き付けておいてください。
3年生が残してくれた偉大なる財産を、しっかりと継承していってほしいと思います。


ここまで話をして、心苦しく聞いていた3年生もいるかもしれません。
推薦入試が不調に終わった人たちです。
でも、ご安心ください。
繰り返しますが、「なぜ勉強するのか」の理由を見つけた人は、強いのです。
受験には「最後まであきらめない」という鉄則があります。
社会のために生きることを決意したならば、あきらめないのではなく、たかが受験をあきらめられないからです。
パナソニックの創業者の松下幸之助は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するまで続ければ、それは成功になる」と言っています。
つまり、偉大な経営者も”最後まであきらめるな”と言っているのです。
何が幸せかはあとから決まるものです。
一般入試で頑張ったことが、人生の財産となるはずです。
必ず一般入試でリベンジをしてください。


最後に、「進路通信」で冬休みの過ごし方を特集しています。
補習や学習合宿とともに有効に活用してください。
そして、長い休み期間に一度は”なぜ勉強するのか”について考えてみてください。
志をもった○○高校生が増えることを期待して進路部長の講話とさせていただきます。