進路部長講話2017 vol4

今日の朝、3階の進路指導部に向かう途中、階段を清掃している生徒がいました。
「何を考えながら、掃除しているの?」と質問すると、その生徒は「学校をきれいにするために掃除しています」と答えました。
この答えを聞いて、あるエピソードを思い出しました。
ケネディ大統領がNASA宇宙センターを訪問したとき、ほうきを持った用務員の男性を見つけて、何をしているのかと尋ねると、男性はこう答えました。
「大統領、私は人類を月に運ぶ手伝いをしています」

もしこれが「部活でやっています」だの「先生から言われてやっています」だったら、私がこの一年間言い続けてきたモテる〇〇高校生が水の泡になるところでした。
モテるために掃除する。
つまり、人を幸せにするために掃除する。
それが当たり前のようにできる○〇高校生、素敵やんと思いました。

この一年間モテる極意を語ってきましたが、最後となる今回、伝えたいことは「変われ」ということです。
「CHANGE」です。
私に変われなどと言われなくても、社会はめまぐるしい速度で変化しています。
私の青春の一部だった「めちゃイケ」や「とんねるずのみなさんのおかげでした」は終了してしまいました。
平成という時代そのものも終わろうとしています。
1つの時代が終わろうとしているのです。
当然、学力の概念も変わります。
これまでの社会では知識を大量に、高速に処理する能力が求められてきました。
しかし、これからの社会では、知識を活用する能力が求められます。
理由は、言うまでもないでしょう
AIです。
もう、耳にタコできたでしょう。
何かあると、すぐにAIといわれる。
ですが、AIがもたらす変化は第四次産業革命とよばれるほど社会に大きなインパクトをもたらします。

例えば一番身近なAIであるSiriに聞いてみましょう。
「hey、Siri。近くのおいしいイタリアンを教えて」
こう尋ねると、Siriは高校周辺のイタリアンを何件か紹介してくれます。
非常に優秀で、とても便利です。
10年前には考えられなかったようなテクノロジーにもかかわらず、この程度のことではもはや誰も驚かなくなるほど、Siriは我々の日常に溶け込んでいきました。
しかし、「hey、Siri。近くのまずいイタリアンを教えて」と聞いてみるとどうでしょうか。
Siriは何も教えてくれません。
まずいレストランという情報がないので答えられないのです。
つまり、AIは知っていることしか答えられないのです。
すでにAIはMARCH・関関同立レベルの大学に合格する力を持っているにもかかわらずです。
知らないことに挑戦できるのは人間だけであり、それこそがこれからの君たちに求められる能力なのです。
知らないこと、つまり新しいことに積極的に挑戦してください。
そうすれば否応なしに、人は変わります。
そりゃ、今まで通りにやっていれば、楽だし、考えなくてすむし、失敗しないから、誰からも文句言われない。
ですが、逆に、現代では変化しないことの方がリスクなのです。

HMVというお店は知っていますか?
私たちの世代は、CDを買おうと思えば、HMVやタワーレコードに行く、誰でも知っているお店でした。
ところが、2013年に倒産しました。
原因は、これです。(スマホを見せる)
音楽配信サービスやyoutubeなど、CDを購入せずにスマホ1つで音楽を楽しむことができるようになったからです。
HMVは、こうした社会の変化に対応するのが遅かったために、倒産したと言われています。

新しいことに挑戦するということは、モテることなのです。
HMVがモテることを考えていたならば、CDにとらわれず、もっと早く音楽配信サービスを展開できたでしょう。
昨日、NHKのプロフェッショナルという番組でユーチューバーのヒカキンと、プロゲーマーの梅原大吾さんが放送されていました。
知っていますか?
愚問ですね、私たち大人より、君たちの方が詳しいでしょう。
いまやユーチューバーは、将来なりたい職業第3位(男子中学生)ですし、かたや日本初のプロゲーマーです。
その二人の共通点は、新しいを通り越して、先人のいない、未知の仕事に挑戦しているということです。
お分かりでしょう。
そんな二人は当然のごとく、モテることを常に意識しています。
ヒカキンは、「誰が見ても嫌な気持ちにならないようにしなきゃ。『大丈夫っしょ』とか何も考えないで調子こきすぎると、案外楽しく見られないような人がいるんですよね」と、ユーチューバーの宿命ともいえる炎上を避けるために徹底的に配慮しています。
また、梅原大吾さんは、「見ている観客を喜ばせることが、この仕事のゴール。当たり前でない、誰もが意図しない予想外の戦い方を見せることで、観客は楽しむ」と考え、大会で勝つことよりもファンを楽しませることを信条にしていました。
彼らは、お金を失うことは恐くないが、ファンを失うのは恐いといいます。
それは、自分の価値はファンの人たちからの興味関心であり、お金はその価値の一部を変換したものに過ぎないことを理解しているからだと思います。
これからの社会では、そんなファンを楽しませるプロレスラーのような生き方が主流になっていきます。
ファンはうつろいやすいものです。
iPhoneだって、毎年のようにヴァージョンアップしているでしょう。
新しいことに挑戦し続けることで、変わることを楽しみましょう。
変わること自体を楽しむことができたら、モテまくりです。


もうひとつSiriに質問してみたいと思います。
「hey、Siri。近くのイタリアン以外の店を教えて」
先ほどのまずいイタリアンと同様に、Siriは何も教えてくれません。
私たちだったら、イタリアン以外だから、和食か中華かファーストフード店などを紹介するでしょう。
でもSiriにとって、イタリアン以外の店は無限にあります。
時計屋もそうだし、アパレルショップもそうだし、美容院もそうです。
AIは意味を理解できないのです。
だから、スマホとどれだけつながっても、学力を高めることはできないのです。

先日、1年生を対象にスマホアンケートを実施しました。
驚くべきことに1年生のスマホ平均使用時間は1日あたり3.5時間でした。
これは、19時に帰宅して24時に就寝したと仮定すると、自宅にいる時間の半分以上スマホを使っていることになります。
さらに驚いたことが、その使用目的の大半が「暇つぶし」だったことでした。
10代の貴重な時間を浪費しているといっても過言ではありません。
ポケモンGOを開発した野村達雄は、20歳のときに、貴重な時間を1時間1200円で売っていることに気づき、全てのバイトをやめたそうです。
君たちもそのことに気づいて欲しい。

それとも、もしかして情報がありすぎて、何をすればいいか迷子になっていませんか?


提案があります。
つながることをやめてみませんか。
永遠に、と言っているわけではありません。
春休みの間だけでもいい。

実は私も、一時期、携帯電話や社会から断絶したことがあります。
簡単に言うと、サラリーマンをやめたあとの約1年間の、ケータイもテレビもない漂流生活の時期のことです。
断絶というと大げさかもしれませんが、それくらいの覚悟が必要なのは君たちの方がよく分かっていると思います。
この時にたくさんの失敗や後悔もしましたが、補って余りあるほどのものを手に入れました。
親友はもちろん生涯の伴侶である妻、今では生業となった歴史、読書や旅を通じて世界を獲得すること、「ハングリーであること、愚かであること」という僕が僕であるための精神性や世界観は、今の自分の根幹をなしています。
それらは、断絶しても私とのつながりを失わなかったものです。
本当に大切なものは、決してあなたのそばから離れたりしません。


最後に、もう一度言います。
変われ。

新しいことに挑戦し続けるモテる〇〇高校生が、一人でも増えることを期待して進路指導部長の講話とさせていただきます。